こんにちは。
法人税において、受取配当等の益金不算入の制度を適用するか否かについて、実際の節税効果を考慮して決定した方がよいとお話ししました。
これは、受取配当等の益金不算入の制度を適用するためには、申告の際に別表を作成しなければならず、節税される金額と還付される金額が見合わない場合は、適用を見送った方がよいという意味です。
今日は、実際に受取配当金がいくらある場合に、どれくらいの節税効果があるかを検討していきたいと思います。
受取配当金額の想定
まずは、制度の対象となる受取配当金の金額を見積もってみたいとします。
仮に年間の配当利回りが「4.5%」だと仮定しましょう。
投資元本に配当利回りを乗じた金額が受取配当金の見積額となるため、10万円~500万円まで100万円単位でみていきます。
投資元本 (A) | 配当利回り (B) | 受取配当金 (C=A×B) |
---|---|---|
10万円 | 4.5% | 4,500円 |
100万円 | 4.5% | 45,000円 |
200万円 | 4.5% | 90,000円 |
300万円 | 4.5% | 135,000円 |
400万円 | 4.5% | 180,000円 |
500万円 | 4.5% | 225,000円 |
実際には、投資した会社によって配当金を出していない会社があったり、配当利回りが4.5%を超える会社があったりとそれぞれの会社の状況によって異なると思いますが、ここでは節税効果を判定したいので、一度上記のような配当金を受取れると見積もっています。
受取配当金の益金不算入金額
受取配当金の益金不算入金額は、持株比率が5%の場合に「受取配当金額×20%」となります。
このため、各投資元本における受取配当金の益金不算入額は次のとおりとなります。
元本 (A) | 受取配当金 (C) | 受取配当金の益金不算入額 (D=C×20%) |
---|---|---|
10万円 | 4,500円 | 900円 |
100万円 | 45,000円 | 9,000円 |
200万円 | 90,000円 | 18,000円 |
300万円 | 135,000円 | 27,000円 |
400万円 | 180,000円 | 36,000円 |
500万円 | 225,000円 | 45,000円 |
実際の節税効果
受取配当金の益金不算入金額は、あくまで「税務上の利益を計算するために、益金(利益)としなくてよい金額」となりますので、受取配当金の益金不算入額(D)の金額が節税金額となるわけではありません。
受取配当金の益金不算入額が「節税金額」だと思いそうですね。
そうなのです、税金は「利益×税率=税金」という計算式になるので、受取配当金の益金不算入額(D)に法人税率を乗じた金額が実際の節税効果となります。
ここでは、法人税率を35%と仮定して節税金額を算定してみたいと思います。
元本 (A) | 受取配当金の益金不算入額 (D=C×20%) | 節税効果 (E=D×35%) |
---|---|---|
10万円 | 900円 | 315円 |
100万円 | 9,000円 | 3,150円 |
200万円 | 18,000円 | 6,300円 |
300万円 | 27,000円 | 9,450円 |
400万円 | 36,000円 | 12,600円 |
500万円 | 45,000円 | 15,750円 |
投資元本が10万円であれば315円の節税効果、100万円であれば3,150円の節税効果が見込めることが分かりました。当然のことではありますが、投資元本が大きくなればなるほど節税効果が大きいという事もわかると思います。
制度を適用するか否かの判断
受取配当金の益金不算入制度を適用する場合、別表を作成しなければなりません。
そして、別表を作成する時間が1時間だったとした場合、315円の節税効果のためにこの制度の適用を受けますか?
私であれば、時給1,000円を下回る作業はしたくないので、目安としては受取配当金が10,000円(想定元本22万円程度)にならない限り制度の適用は受けないと思います。
受取配当金の益金不算入制度の適用を受けるかどうか迷った方は、参考にしてみてください。
別表の作成は完全に「慣れ」だと思いますので、一度作成にチャレンジしてみてもよいかと思います。